【2024年3月発行 第76号目次】

ふかぷくインタビュー第71回
創業100周年を迎えた「京呉服の店 田巻屋」の田巻雄太郎さんです。三代目としてお店を継いでから、デニム着物など新しい試みを次々と手掛けられてきました。またこのほど店内の一角に写真スタジオ「studio YAGURA」をオープンします。

〔連載/企画記事〕
・のりさんの口福 
(イラストレーター・福田紀子)
深川不動の参道に開店して3年目の天然鯛焼き「鉄華」さんです。一つ一つしっかり焼き上げる「一丁焼き」で、あんが端までぎっしり!

・はっけよい 深川の相撲部屋(64)大嶽部屋 兄弟力士篇(イナバリエ)
横綱大鵬の孫で、地元江東区出身の3兄弟、関取の王鵬関と 夢道鵬さん、納谷さんにお話を伺ってきました!


ウズ(UZU)チャリティショップ(江東区平野)の店主、大安羽生子さんです。店内に並ぶ手頃な子ども服や婦人服はすべて寄付された物。売り上げから動物愛護団体に寄付を行っています。

ふかがワンダーランド
門前仲町の新施設「深川えんみち」内に、一箱本棚オーナー制度の私設図書館「エンミチ文庫」がオープンします。本棚オーナーの募集が始まります。

深川温故知新 「深川」の痕跡
昭和40年代に住所表示から消えた「深川」。でも深川のまちのあちこちに痕跡が残っています。

ふかぷくEYE スタッフ・リレーコラム 
スタッフちはるさんの担当で、土曜の昼だけ絶品ラーメン店になる資料館通り「のみくい処 きくちゃん」さんの話題です!

・4コマ漫画・鬼平太生半可帳

・表紙写真
柴田和史(フカフォト)撮影

*記事は随時アップします。紙の「かわら版」は大江戸線清澄白河駅改札内などに設置中です。

はっけよい深川の相撲部屋 其の六十四 大嶽部屋 兄弟力士篇

兄弟そろって関取になる日を

2024年3月発行 かわら版 深川福々第76号

右から納谷、王鵬、夢道鵬ー大嶽部屋

 初場所、力士12人のうち11人が勝ち越しと好成績を収めた大嶽部屋。大阪開催の三月場所に向け稽古再開して間もなく、横綱大鵬の孫であり関脇貴闘力の息子である兄弟力士にお話をうかがうことができた。

 三男で関取の王鵬(24歳)は東前頭3枚目に。ついに上位総当たりまで自己最高位を更新した。

王鵬

 四男夢道鵬(むどうほう・22歳)は自分の相撲を「なんでもやってみたいタイプ」だと言い、稽古の重点は立ち合いの瞬発力や押す力をつけること。自己最高位の西幕下12枚目は十両射程圏だ。

夢道鵬

 大学卒業後に入門した次男納谷(26歳)は、コロナ禍で無観客開催された2020年三月場所が初土俵。「大阪は、新たに頑張ろうという気持ちになる」と言う。西三段目26枚目で勝ち越せば、五月場所は幕下に復帰する。ちなみに、四兄弟の長男はプロレスラーだ。

納谷


 実は、王鵬は関取になってから最高位更新の場所はすべて負け越している。「また、上じゃ通用しないなと思われたら悔しいので、上位対戦でも強くなったなと思われる相撲を取りたい」と、静かな口調ながら瞳の奥に闘志がのぞいた。
 
 以前は攻めが遅い相撲が多かった印象だが、最近は積極性を感じる取り口が増えた。穏やかな風貌の内側に闘志を育んでいるのだろう。いつも本場所中に体重が落ちるが、大阪では増えるとのこと。食にも恵まれる三月場所で、土俵を大いに沸かせてほしい。

(文・イナバリエ、写真・柴田和史 2024年2月取材)

のりさんの口福 鉄華

2024年3月発行 かわら版 深川福々 第76号

深川不動尊の参道に開店して3年のたい焼き屋さんです。一つずつ、自家製餡をみっちり入れて焼き上げたこだわりの天然鯛焼き(一丁焼き)です。春の深川散歩のお供に是非!

所在地 江東区富岡1丁目14−4

(文・絵 福田紀子)

イラストレーター・福田紀子公式サイト「のりまき大福帳」
https://norisan.jimdofree.com/

【2023年12月発行 第75号目次】

ふかぷくインタビュー第70回
「ワイルドシルクミュージアム」(江東区平野1)館長の坪川佳子さんです。坪川さんは蚕(カイコ)や絹に親しめる場を運営するだけでなく、オリジナルの蚕「深川蚕(フカガワサン)」を育て、その繭から出来る「深川シルク」の良さを伝えています。

〔連載/企画記事〕
のりさんの口福 (イラストレーター・福田紀子)
森下駅近くのカジュアルレストラン、ピジョンさんです!
美味しい丸焼きチキンやタコスなどさまざまなメニューが楽しめます。

はっけよい 深川の相撲部屋(63)山響部屋 北磻磨篇(イナバリエ)
37歳の今も現役を続け、九月場所と十一月場所で活躍した山響部屋(江東区東砂)の元関取、北磻磨。現在は幕下ですが、一月場所で9回目の十両昇進に挑戦します。

深川のパイオニア 
新企画です!初回は世界各地の空港で使用されている台車のメーカー、「花岡車輛」です。

ふかがワンダーランド
清澄庭園向かいの眺めのよいシェアオフィス、「NAGAYA清澄白河駅前」。会員でなくても格安で一時利用ができるようになりました。

深川温故知新 「小津さんがいた」
深川生まれの小津安二郎監督は今年生誕120年。小津さんの深川での足跡をたどります。

ふかぷくEYE スタッフ・リレーコラム 
「区境まちあるき」

4コマ漫画・鬼平太生半可帳

表紙写真
柴田和史(フカフォト)撮影

ふかぷくインタビュー第70回 ワイルドシルクミュージアム館長 坪川佳子さん

「深川シルクの良さを伝えたい」

2023年12月発行 かわら版 深川福々 第75号

坪川佳子(つぼかわ・けいこ)さん。ワイルドシルクミュージアムは通常、木・土曜の13~17時に開館。日曜は軒先で「糸市」を開催。江東区平野1-5-5 (写真・柴田和史)

 絹糸を吐く虫、蚕(かいこ)。かつて日本は世界一の生糸輸出国で、「お蚕さま」は身近な存在だった。そんな蚕や絹(シルク)に親しめる場所が江東区平野にある。温もりが感じられる空間には、蚕の標本や繭、絹製品や手作業の機械が並ぶ。
 
 ただし普通の蚕とは違う。「ワイルドシルクミュージアム」を運営して8年になる坪川佳子さんにお話を伺った。

―ワイルドシルクとは何ですか

 絹糸を吐く昆虫は世界中に約10万種類いると言われています。そのうちの一つを人間が飼いならしたものが蚕で、家蚕(かさん)と呼ばれます。白く綺麗な糸が出るよう改良され、成虫は飛べなくなりました。それ以外の絹糸昆虫を野蚕(やさん)といい、野蚕が産み出す絹糸をワイルドシルクといいます。

―ミュージアムを開いたきっかけは? 

 十数年前、衣類の縫製の仕事をしていたとき、シルクの端切れで枕カバーを作ったのですが、すぐに髪がつやつやになったんです。それはワイルドシルクでした。調べたくなって、布から糸へ、糸から繭へ、繭から昆虫へと興味がエスカレート(笑)。そして日本野蚕学会のことを知り、糸の構造を調べたいと言ったら大学の先生たちが素人の私を歓迎してくれました。学会で勉強して、ワイルドシルクのことをみんなに知ってもらいたいと考えるようになり、街なかでミュージアムを開くことにしました。

―野蚕の飼育もされているのですね。

 インドのアッサムに生息するエリサンという種と東京のシンジュサンとの交雑種、「深川蚕(フカガワサン)」です。以前から2つの種は交雑できると分かっていて、研究では2世代ぐらい育てたら終わるところ、私はしつこくて、飼育を始めて10年。58世代目になりました。学会にも報告済みで、その名で知られています。

 深川のマンションの一室に作った蚕室で、毎サイクル千匹飼育しています。餌やりと掃除に一日8時間ほどかかるのでミュージアムの開館は週2日です。

―なぜ深川蚕を育てているのですか?

 深川蚕から出来るシルクの良さを知ったからです。蚕から絹糸を得るには、ひとつは蛹(さなぎ)が入ったままの繭を煮て、繭から糸を引き出します。これが光沢のある生糸です。

 深川蚕は繭の構造上、生糸が作れないので、もうひとつの方法で紡ぎ、糸にします。
中の蛹が成虫として出ていった後に繭を煮ます。すると繭が綿状になり、紡ぐとふっくらした糸になります。

 糸は太めでゆらぎがあり、UVカット・抗菌・保湿など高い機能性を持っています。
毎日着るものにオススメです。

―手触りも色味も安らぎます。

 10年育てて、繭は綺麗なオレンジ色になりました。ただ、煮ると色が抜けて白っぽくなります。オレンジの水溶液は美容に活用できないかと思案中です。

 蚕を育てて出来るものは無駄にしないで利用したいので、蛹(さなぎ)食にも取り組んでいます。私も最初、抵抗がありましたが、枝豆のように美味しいんですよ。栄養価も抜群で。見た目に抵抗がないようペーストや粉末にしています。保健所から農作物として販売許可が下りました(笑)。小学校の出前授業で粉末入りのドーナツを試食してもらったら好評でした。
 蚕のフンは天日干しするとお茶になります。中国では高級茶です。

―プーアル茶に似て美味しいです。

 フン茶には餌が大事ですが、深川蚕の餌は(桑ではなく)トウネズミモチという常緑樹の葉です。漢方胃腸薬の成分でもあります。実は江東区にも生えていますが、現在は埼玉の造園業者の友人に送ってもらっています。もっと楽に調達できたらいいのですが。

―ユニークな商品もありますね。

 足指リングはワイルドシルクの消臭効果を実感できますよ。商品はひとつひとつシルク仲間と開発してきました。

 将来は深川で、蚕の飼育からシルクの生産、商品化までサイクルができたらいいなと思っています。みんなで育てて、地元の作家さんに制作してもらって。

―まさに深川産!夢が膨らみますね。

オレンジ色の深川蚕の繭と紡いだ糸(写真・東海明子)

(文・東海明子)

深川のパイオニア 花岡車輌

台車は進化する。

2023年12月発行 かわら版 深川福々 第75号

花岡雅(はなおか・まさし)さん。本社は白河2―17―10。1階で商品を購入できる

 江東区白河2丁目にある花岡車輌は創業90年。1965年に日本初の規格量産型の台車「ダンディ」シリーズを発売、1974年に行われたパンナム航空の世界コンペで、コンテナを航空機まで運ぶドーリー(空港用トレーラー)に製品が採用され、今では世界各地の空港で使われている。空港ビルで旅客がスーツケースを載せて運ぶカートでは日本随一のシェアを誇り、「花岡車輌のカートを置けば空港が演出できる」とドラマロケへの協力を依頼されることも多い。

 常務取締役の花岡雅さんは、大学でプロダクトデザインを学び、デザイン会社を経て2010年に入社。デザインとは無縁だった業界において、かっこよさだけでなく「HANAOKA」らしさを追求してきた。新モデル「ダンディXシリーズ」(写真)は音が静かで軽いうえ、押す負担を抑える持ち手や車輪交換のしやすさなどユーザーの課題に向き合い、2019年度グッドデザイン賞を受賞した。

 高性能の台車は主に運送現場や工場で活躍するが、たまに台車を使う一般の消費者向けに開発したのがFLATCART2×4(フラットカート ツーバイフォー)だ。シーンに応じて4輪にも2輪にもなり、使わない時は車輪を折り畳んでコンパクトに収納できる。ビームスで先行発売されると、まるで変形ロボット「トランスフォーマー」のようだと爆発的な人気が出た。様々な企業とコラボし、一気に会社の認知が広まった。

 台に車輪とシンプルな台車の可能性は底知れない。高さが変えられれば積み替え作業による腰痛を防げるし、イスを乗せて動かせるテーブルに姿を変えれば、スペースの使い道が広がる。花岡さんは「パイオニアであり続ける、それが花岡車輌らしさだと思います」と話す。

 (文・松島直子、写真・黒崎亜弓)

ふかがワンダーランド どこで仕事をする?

2023年12月発行 かわら版 深川福々 第75号

シェアオフィス「NAGAYA清澄白河駅前」

 デスクワークから顔を上げれば、目に入るのは清澄庭園の木々に空…。こんな穴場が清澄白河駅近くにある。シェアオフィス「NAGAYA清澄白河駅前」。個室は1〜4人向き。窓に面したオープンスペースは会員に加え、誰でも一時利用できる。イベントにも貸し出している。

 この場を作った合同会社「カツギテ」は地元の有志9人から成る。「地域のハブ(結節点)となれば」と椎名隆行さん(グラスラボ)。営みも様々な人たちが交流する機会を設けている。

 月額会員はいつでも利用できるプランと、週2程度や夜間・土日のプランがある。一時利用は平日10〜17時で2時間以内1000円、2時間以上2000円。初めての利用は事前に連絡を。足を踏み入れれば、気分だけではない変化が訪れるかもしれない。

NAGAYA清澄白河駅前
江東区三好1-8-3-2F。電話03-6458-8958

詳細は 
https://nagayaoffice.com/nagaya-ks2/

(文と写真・黒崎亜弓)

ふかぷくEYE 区境まちあるき

2023年12月発行 かわら版 深川福々 第75号

 キッチンぶるどっく。森下の交差点から清澄通りを少し北上した場所にある老舗洋食店。

 かつては江東区と墨田区にまたがって建っていた長屋の一番北側にお店があり、長屋の他の店は江東区なのに、ここだけ墨田区でした(千歳3丁目)。

 もともと区境だった五間堀跡に建てられたため、区境が長屋内を通っていたのです。

 長屋は取り壊しになって2020年にマンションに変わりましたが、以前と同じ場所で営業しています。

 先日、私は趣味の区境歩きの途中でこのお店に差し掛かり、「江東区森下一丁目」の住居表示プレートが貼ってあることに気づきました。場所は一切変わっていないのに区が変わっている!なぜ?

 これは直接聞くしかないとお店に入店。ランチを注文がてら「以前は墨田区ではなかったですか?」と質問すると、「マンションになると、敷地面積が広い方の区になるらしいんです」「料理店の認可も今は江東区から頂いてます」とのこと。

 場所は変わらないのに住所が変わるなんてあるんだー、と驚きつつ、住所は変わっても、変わらない美味しさに満足しました。

キッチンぶるどっくは森下1-7-1。この日は牛タンカツを注文

(文と写真・早川明希雄)